実は危険なジャージの登山!使いやすさに潜むリスクとは

ジャージはどこにでもある、動きやすい服です。登山に使ってしまう人もいるでしょう。確かに、ジャージでも山に登ることはできますが、ジャージ登山は実は危険な行為です。使いやすさに潜むリスクと、安全な登山に必要なウェアを解説します。




ジャージの機能と潜むリスク

■ジャージの機能と素材


ジャージは動きやすく、運動に向いているウェアです。素材もポリエステルで作られており、風通しが良く、体育館での激しい運動には最適です。誰もが1着はジャージを持っているのではないでしょうか。その為、登山を始めたばかりの人は「運動なのだからジャージで良いか」と山にジャージで行く人がいます。ですが、ジャージを登山に使うには、リスクが高いのでおすすめできません。ジャージはあくまでも体育館などでの使用を前提とした製品です。環境の変化が激しい登山には不向きな点があるので注意しましょう。

■体が濡れるリスク


登山では体が濡れる可能性が有ります。雨、汗、蒸れなどの水分から体を守る事が必要です。濡れた体は、水分の気化熱で体温を奪われます。ウェアが水分を吸収する事で体温を維持する事が出来ます。ジャージに使われるポリエステルは、風通しが良く、汗を素早く乾燥させるのに有効です。しかし、風により気化熱で体温が奪われます。また、綿のジャージは、もつと登山に不向きです。水分が付着した綿製品に体温が奪われてしまうからです。体育館などでは運動を継続する為に、体温を下げる事が望ましいです。しかし、登山では体温を維持する為に、専用のウェアの着用が必要です。

■登山とジャージの相性


ジャージは動き易いですが、自然環境の変化に対応できません。気温は標高が100m上がるごとに0.6度下がります。麓では暑くても、登り始めると次第に寒くなります。標高が高いと風も強くなります。風は体感温度を低下させ、低体温症の危険性を高めます。防風性能が殆ど無いジャージは、風に対して無防備です。麓と山頂では天候が異なり、山頂付近は天候が急変します。麓で「今日は暑いし、風もないからジャージで良い」と判断しても山頂付近では異なり、ジャージでは対応出来ない事が有るのです。

ポイント

  1. ジャージは環境の変化に弱く、登山に不向き

ジャージに無い機能を持つ登山ウェア

■レイヤリング


登山ではウェアを選択する時、レイヤリングが基本的な考え方になります。レイヤリングとは、状況に合わせて重ね着をすることです。そうすることで、総合的にウェアの性能を発揮でき、環境の変化に対応できます。レイヤリングは3層に分けて考えます。体に近い内側から、ベースレイヤー、ミドルレイヤー、アウターレイヤーです。その役割は以下のようになります。

  1. ベースレイヤー 吸湿性。体に密着し、汗を吸収する。
  2. ミドルレイヤー 防寒性。暖かさのコントロールをする。
  3. アウターレイヤー 防風性。雨や風から体を守る。

それぞれの役割を理解すれば、環境の変化に対応できる、安全な登山が可能になります。

□吸湿

登山は汗との戦いです。汗は人体の持つ体温調節の機能ですので、健康のためにもたくさん汗をかきましょう。問題は休憩時です。運動を止めると、風が気化熱で汗を通して体温を奪っていきます。体温を失うと、人体は体力を使って取り戻そうとします。それは、体力の限界を早めてしまいます。「夏は暑いから、ジャージでも良い」と初心者ほど油断しまいますが、暑いときほど機能的なウェアが必要です。登山用のウェアには、体温の変化を押さえる効果があります。体を強烈な日光から守ることが、快適な登山を可能にしてくれます。ジャージは汗を吸いとらないので、暑さに対しても無防備です。休憩中に寒さで震えたくないのなら、ジャージでの登山は止めておきましょう。汗で濡れた体は、風で体温を奪われます。汗の吸収は、登山用ウェアの大切な機能です。体温を回復させる為のエネルギー消費は体力を低下させ、山での行動不能の可能性を高めます。体温を維持する事で、安全・快適な登山が可能となります。登山での発汗は避けられないので、ウェアには吸湿性が求められます。ジャージで利用されるポリエステルは吸湿性に劣ります。風通しが良いので、体温が奪われて行きます。安全・快適な登山の為にも、ジャージでの登山は止めましょう。化学繊維やウール製の登山用のインナーは、吸湿性に優れています。汗を吸収し、乾燥させてくれるので、オールシーズン使う事が出来ます。また、汗の臭いを抑制する機能を持つ商品も有ります。

モンベル
ジオライン

吸水性があり、汗の臭いを押さえるウェア。

□防寒

絶えず気温が変化する山では、防寒性の高いウェアが必要です。特に休憩時は、すぐにザックから取り出せる場所に入れておけるよう、コンパクトに収納出来て、軽量なウェアが有効です。例えば、谷川岳のロープウェイなら、ロープウェイとリフト経由で標高差800mを移動し、標高1502mの天神峠展望台に一気に着けます。ロープウェイやリフトを利用すれば、初心者でも、標高の高い山への挑戦が可能となるのです。しかし、標高の高さは低気温や強風を伴います。ジャージでは活動出来ないので、環境の変化に強い登山用ウェアが必要となります。登山用のウェアであれば、防寒性があり気温の変化に対応できます。山では寒さ対策を常に心がけましょう。

パタタゴニア
キャプリーン・サーマルウェイト・ジップネック・フーディ

保温性と通気性を兼ねたミドルレイヤー

□防風

登山では強風への備えが必要です。標高が高いと障害物が無い為、麓より強風となります。風は体温を奪い、ジャージでは対応出来ないので、防風性の高い、以下のようなウェアを着用しましょう。

  1. ウィンドブレーカー
    コンパクトに収納でき、一定の湿度を維持することで、体温を維持することができます。
  2. ソフトシェル
    柔らかな着心地。ウィンドブレーカーよりも着易く、長時間の着用が可能です。

ミレー
ティフォン50000ウォームストレッチジャケット

ソフトシェルに定評のあるミレーのジャケット。様々なシーンで快適に使える。

□防水

登山中の雨は避けられないものです。天気予報が晴れでも、必ず雨具を携行します。雨が降れば雨具を着ればいいのですが、困るのは小雨の時です。いちいちザックから取り出すほどでもない、すぐ止みそうな雨の時は、とても判断に困ります。撥水効果のある、登山用のウィンドシェルはそのような時に有効です。小雨などは気にせずに、ガンガン進むことができるので、着替える時間を短縮することができます。

マーモット
ZEROフロージャケット

超軽量ながら高い耐水圧と動きやすさを実現したウィンドシェルです

■カラーリング


登山ウェアは派手なカラーリングの製品が多いです。これは、遭難時に救助する側が見つけ易いようにする為です。自然界には無い、赤・青・オレンジ・ピンク等の色は山中での視認がし易く、レスキューが発見する可能性を高めます。自然にはない人工的な彩色を選びましょう。

パタゴニア
ウィンドブレーカー フーディニジャケット

パタゴニアらしい目立つカラーと、羽のような軽さが特徴。ザックの外側のチェストポケットに入る小ささ。

まとめ

  1. 風を通すジャージは登山には不向き
  2. 登山用具は自然環境の変化に対応できる