時期に応じて快適登山!装備を整え、東日本の絶景を巡る四季の山旅

積雪に覆われた厳冬期の高山を除けば、国内には季節毎に絶景を楽しめる山岳が各地に点在しています。時期に応じた装備を準備し、四季それぞれの魅力に溢れた山域に足を伸ばすのも登山の醍醐味。対象の山岳を事前にリサーチし、安全・快適に登山を楽しむことが重要。

季節毎の山の魅力

日本の山岳には、四季折々の季節や時期毎の様々な魅力があります。春には新緑、夏には高山植物、秋には紅葉、冬には冬枯れした林。それぞれの時期毎に、日本の山々は登山者を惹き付けます。

■春は低山


3月〜5月は標高により、残雪が残ります。残雪の少ない山を選択しましょう。東日本の太平洋岸の低山であれば、新緑と花に囲まれ、低山ハイクを楽しむことが出来ます。




■夏は高山


6月~8月は高山の残雪がほとんど消えます。登山中級者なら2000m級の高山にトライできる絶好の時期です。特に東北地方の「飯豊山脈」、「朝日連峰」などの山深い深山の稜線上は、梅雨が明けるとまるで「雲の上の別天地」。色とりどりの高山植物が辺り一面に咲き乱れています。

■秋は紅葉


9月~11月は秋晴れの日に、山々の紅葉を楽しみましょう。9月下旬から10月中旬は最も天候が安定し、紅葉登山に最適です。降雪の心配がなければ、3000m級の山岳へ挑戦する事も可能です。

■冬は低山ハイキング


降雪の無い、関東から東海、西日本の太平洋岸にある1000m未満の低山がオススメです。晴天率も高く、虫も少ないので快適。


季節毎の注意点

■春の残雪


里は春でも、1000mを越す山岳では、5月末までは降雪対策が必要。2000m超の山域は、5月のゴールデンウイークでも完全な雪山です。積雪の無い山を選択しましょう。ただし、積雪の無い山域を選んだつもりでも、日陰や稜線上など予期しない場所に残雪が残っている場合があります。滑落防止の為、春山では「軽アイゼン」を持参しておきましょう。

■夏の天候急変


6月〜8月は天候が急変する時期です。「梅雨」は6月初旬から始まり、登山には辛い時期。登山道はぬかるみ、木道は、滑りやすいので、歩行時は転倒しないように気を付けましょう。激しい雨が想定外の低体温症を招くこともあります。備えとして、保温効果と透湿性が高いアンダーウェアの着用と、防水・透湿素材のレイヤーを必ず持参しましょう。梅雨が明けても夏山シーズンには、天候急変の可能性が有ります。夏山は天候悪化に対応できるように、「早朝・早立ち」で時間に余裕を持たせましょう。さらに、この時期には熱射病対策と害虫対策が欠かせません。標高が低いと気温が上昇し、汗をかきます。脱水を起こさないように、水分補給しましょう。また虫(ハチ・マダニ等)の活動も活発になります。草地や藪で刺されないように肌を露出させないようにしましょう。

■秋の防寒


秋は、寒暖差が大きく、朝晩の冷え込みが厳しい時期です。秋雨前線の影響で晴天は長続きせず、局地的な大雨や台風も到来します。日照時間が短く、日没も早まります。降雪の可能性も出てきますので、しっかりした防寒と、ヘッドランプを持参することが必要です。この時期は気象情報を良く確認し、少しでも危険だなと感じたら入山するのは控えましょう。

■冬は雪を避ける


冬型低気圧に注意しましょう。各地で降雪が始まります。標高は低くても、降雪がある山もありますので、事前に調べて、降雪のある山への入山は避けましょう。降雪の無い山でも、真冬の寒さ対策が必要です。化繊のアンダーウェアを着用し、レインウェア以外に、防水・透湿素材のアウターも必ず持参しましょう。特に登山靴とアウターは専門店で購入することをお勧めします。

季節に応じたおすすめの山岳

■春にオススメ「鋸山」(千葉県)


2月〜5月が登山適期。房総半島の南、標高329mの低山。新緑と太平洋の展望を楽しむことができます。稜線がギザギザで、ノコギリの歯のように見えます。

コース
「車力道(しゃりきみち)」を登って「関東ふれあいの道」を下るコースがおすすめ。足場はやや悪いものの傾斜が緩やか。下りの関東ふれあいの道は、海側の景色が綺麗です。(所要時間:往復約2時間半)
※ロープウェイを使って簡単に登る最短コースもあります。

アクセス
車なら「富津・館山道路」経由で「富津金谷IC」下車。国道127号線を館山方面に約5分。電車はJR内房線「浜金谷駅」で下車し、国道127号線を館山方向に徒歩約8分。(千葉駅-浜金谷駅(普通)所要約80分)

植物
水仙(12月~2月)紅梅・白梅(2月~)山桜・彼岸桜など(2月中旬~3月)ソメイヨシノ・しだれ桜・八重桜(3月下旬~4月)つつじ(5月)

見所

  1. 「地獄のぞき」:鋸山で一番人気スポット。山頂部に突き出た岩から見ると、足下がスッパリ切れ落ちています。太平洋の大海原や周囲の山々が見渡せます。
  2. 「百尺観音」:昭和35年から6年の歳月をかけ、昭和41年に完成した約30mの巨大な石像。太平洋戦争の戦没者や交通事故の犠牲者を供養するため建立。
  3. 「日本寺大仏」:鋸山一帯は「日本寺」の境内です。高さは約31m。日本国内で最も大きな磨崖仏です。奈良の大仏よりも大きな大仏で、見る者を圧倒します。

■夏にオススメ「霧ヶ峰・車山」(長野)


登山適期は6月~10月。初夏に咲き始める高山植物を楽しめる。最高点は「車山」(標高1925m)で、辺りには湿原が広がる。

コース
車山肩~車山山頂~車山湿原~車山肩~八島湿原(所要約3時間半
霧ヶ峰周辺には天然記念物に指定された3つの高層湿原があり、貴重な草花がたくさん咲いています。初夏、高山植物が咲き始め、いよいよ夏山シーズンの開始です。辺り一帯には黄色いニッコウキスゲが群落を作り、草原の中をゆっくり散策することができます。草原の彼方には蓼科山とその奥に青く光っているのが八ヶ岳。南側に連なっている山並みは北アルプスや南アルプスの峰々です。車山肩周辺を散策したら、丸い気象レーダードームがある車山山頂を目指します。コバルトブルーの青空と草原の続いている緩やかな登山道。1時間もかからずに山頂に到着です。360度の大展望が開け、登山者の目を楽しませてくれます。眼下に白く光り輝いているのが白樺湖です。

アクセス

  1. 電車:JR中央本線「茅野駅」下車。バスで約75分で車山肩下車。長野新幹線「佐久平駅」下車。バスで約95分。
  2. 車:中央自動車道路「諏訪IC」下車、国道152号線-白樺湖-ビーナスライン-車山肩駐車場(約50台駐車可能)。上信越自動車道「佐久IC」下車。国道142号線-県道40号線-女神湖-白樺湖-ビーナスライン-車山肩駐車場。

植物
スズラン・レンゲツツジ・アマドコロ(6月)ニッコウキスゲ・ミズチドリ(7月)オオバキボウシ・ホタルブクロ・コオニユリ(7月~8月)キンポウゲ・クガイソウ・マルハダケブキ(8月)

おすすめスポット
コロボックルヒュッテ
登山口である「車山肩」近くにあるのが有名なカフェ「コロボックルヒュッテ」。税込500円の美味しいチーズケーキを「日本の絶景」の一つに選ばれたテラス席で頂きます。目の前に広がる湿原と蝶々山のなだらかな稜線がこのお店の最大の魅力です。

  1. 営業期間:8時~16時30分 4月下旬から11月末のみ営業。夏期は早朝より日没まで営業。期間中は無休。
  2. 問い合わせ先:電話0266-58-0573

■秋にオススメ「安達太良山」(福島)


紅葉の見事な山。登山適期は5月中旬〜11月上旬。紅葉の見頃は9月下旬(山頂付近)~10月下旬(登山口周辺)。標高は1728mながら、「牛の背」「馬の背」と呼ばれる荒涼とした稜線からは、爆裂火口「沼の平」の大展望が広がる百名山の一つ。

コース
塩沢登山口-馬返し-屏風岩-八幡滝-くろがね小屋(往復所要時間:約6時間半)

落葉樹と美しい滝巡りを楽しめるのが「湯川渓谷ルート」。塩沢登山口から湯川沿いに登り始めると、途中にある「屏風岩」の見事な紅葉や「八幡滝」、「悲恋滝」など優美な滝の姿が見事です。下山後は塩沢温泉で日帰り入浴も楽しめます。

アクセス

  1. 電車:JR東北本線「二本松駅」下車。福島交通バスで約1時間。「奥岳登山口」下車。
  2. 車:東北自動車道二本松IC下車。岳温泉経由で約50分で奥岳温泉駐車場。ハイシーズンは駐車料金1000円。

植物
9月下旬より色づき始め、例年見頃は10月上旬~10月中旬。紅葉する樹木はブナ、ミズナラ、イタヤカエデ、ナナカマド、落葉松など。

施設
くろがね温泉小屋 所在地(福島県二本松市永田字長坂地内)

連絡先 電話090-8780-0302

塩沢登山口からおよそ1時間の場所にある秘湯「くろがね小屋温泉」。麓にある「岳温泉」の源泉を引湯している鉄山直下のこの山小屋では、410円で日帰り入浴ができる白濁した温泉が絶品です。もちろんくろがね小屋は、通年営業の山小屋なので宿泊も可能です。小屋一番の人気メニューはカレーライス。

■冬にオススメ「奥久慈男体山」(茨城)


登山適期は11月下旬~3月初旬。標高654mの低山で、積雪は少ないが、2月中までは積雪があるので要注意。山頂からは冬の那須連山や阿武隈山系、富士山の眺望。冬のハイキングは空気が澄み渡り、墨絵のような風景が広がります。

コース
「一般コース」大円地(おおえんじ)駐車場-大円地-奥久慈男体山山頂-大円地駐車場(所要時間は約4時間50分)

登山ルートは「一般コース」と「健脚コース」の2コース。若干アプローチが長いですが、「一般コース」がオススメです。「健脚コース」は滑りやすい岩稜が続き、鎖場が多く、事故も発生しているので、滑落や転落に注意が必要です。

アクセス

  1. 電車:JR水郡線「西金駅」下車。タクシーで約20分。
  2. 車:常磐自動車道「那珂IC」下車。国道118号線を北上。約1時間半で大円地駐車場到着。紅葉が残る時期は国道が渋滞するので、駐車場到着には2~3時間程度かかります。

植物
落葉樹が色づくのは10月初旬から11月下旬まで。冬枯れした木立が美しいのは12月初旬から3月下旬まで。4月初旬から古分屋敷(こぶやしき)周辺は新緑が始まります。

周辺の見所
登山口にほど近い「古分屋敷」は、「茨城百景」に選ばれた景勝地。NHKをはじめ、テレビや雑誌でも度々取り上げられている日本の原風景がそのまま残っている山里です。周囲は山に囲まれ、景勝地「篭岩(かごいわ)」などの奇岩が林立。民家が急な段々畑に沿って建っており、朱色のトタン葺きが広がっています。





まとめ


  1. 計画段階で山と温泉と天気の情報収集に努め、火山ガス・増水した渓流は避ける。
  2. 安全快適に登山に出かけるための季節に応じた必要装備品を装備。
  3. それぞれの時期毎に山域も標高も変えることがポイント。
  4. 四季を通じて登山を楽しむために事前のリサーチが何より重要。