登山をするなら山岳保険。事故に備えてメリットと注意点を押さえる!

登山中に発生する怪我や思わぬ事故を想定すると、多額の救助費用に備えるためにも山岳保険に加入しておく事が大切。各社から販売されている山岳保険の特徴を理解し、そのメリットと注意点を踏まえ、自分の登山スタイルにうまく合った保険を選ぶことがポイントです。

登山で山岳保険が大切な理由

楽しい登山。しかし、危険も伴うので、万が一への備えが必要です。

■山岳事故の増加の実態


2017年には3,111人の遭難者が発生し、山岳事故は年々増加し続けています。主な原因は、以下の通り。

  1. 登山人口の増加
  2. 登山者の高齢化
  3. 登山経験の少ない登山者による不注意や装備の不足
  4. 温暖化に伴う激しい気象変化

遭難事故に遭遇した登山者の相当数が、山岳保険に未加入です。



■遭難者の救出のために


●対応
いったん遭難事故が発生すると、警察を初めとして遭難者の捜索と収容には様々な関係者が関わります。

  1. 地元警察から関係機関に通報され、山岳救助隊が編成及び招集される。
  2. 遭難者を発見するために、直ちに公的機関所有(県警等所有)の救難ヘリコプターが出動。
  3. 地元山岳会や消防団(数十名から数百名)へ遭難者の救援を要請。

遭難が発生すると、捜索・搬送に多数の人員が必要となります。

●費用
遭難者を捜索・救助・搬出する為には、下記のように高額な費用がかかります。

  1. 捜索隊の日当:最低1.5万円〜2万円/1人。(地元消防団員等)
  2. 捜索隊の人数:100名〜
  3. ヘリコプターの利用料:約100万円〜。相場は1万円/1分。

従って、1日だけの捜索でも数百万円以上の費用が発生します。また、現場に行く親族の交通費・宿泊費も別途、必要です。また、収容後にも諸費用が発生します。

  1. 怪我をした場合は搬送・治療・入院費用。
  2. 携行品の損害費用。
  3. 死亡時は遺体搬送費用や葬儀費用。

更に積雪期に雪崩で遭難の場合は、登山者を収容するのに数ヶ月単位の日数と人員が必要となり、費用が増加します。

選び方のポイント

■登山スタイルに合った保険を選ぶ


山岳保険を選ぶ際には、登山スタイルに合った二つのタイプから保険を選択しましょう。

  1. 危険度の少ない「軽登山」や「ハイキング」が目的の保険
  2. 岩山登攀や雪山登山などの「本格登山」を目的とした保険

■保障内容を正しく理解して選ぶ


山岳保険に加入する際のポイントとして、次のような保障内容(特に対象期間)を正しく理解することが大切です。

  1. 1日単位の保険
    レジャー保険(旅行傷害保険)等
  2. 年単位の保険
    山岳保険等(損害保険に特約で登山活動を加えたもの)
  3. 保障内容
    軽登山だけが対象なのか、アイゼンやピッケル使用の登攀も対象なのか、補償する登山内容(ほとんどの保険で登攀は対象外)。

1日単位のレジャー保険は、保険料が手頃なので、保障を充実させる選択も可能。短期間の旅行や登山に最適な保険です。ただし、その都度加入手続きをする必要があり、登山回数が多い方には手間がかかります。年単位の山岳保険は、保険料が高額となります。しかし、1回の手続きで1年有効なので、登山回数が多い方には手間が省けて最適です。

■加入の手続きと内容


登山の保険に加入するには以下の方法があります。

●既存の保険に特約をつける
「自動車保険」や「火災保険」へ加入済の場合は、特約で個人賠償を安価につける事が可能な場合が有ります。保険会社に相談しましょう。

●新規加入

  1. 店頭
    ・アウトドアショップ
    各社の山岳保険のパンフレットが置いてあります。
    ・保険代理店
    損保各社の旅行傷害保険に「総合損害保険」の特約を付けたり、山岳活動をカバーするレジャー保険を選びましょう。
  2. オンラインでの加入
    ネットで加入できる商品も増えています。
  3. 携帯電話会社経由での加入
    軽登山やハイキングであれば大手3社(docomo、au、SoftBank)が加入者向けプランとして、レジャー保険や旅行保険を提供しています。但し、携帯電話の契約解除と同時に、山岳保険の契約も即時消滅するので注意が必要です。
  4. 山岳団体経由での加入
    日本山岳協会共済会の適用を受けている山岳団体に加入することで、保険対象となります。

おすすめの山岳保険5選

■日本山岳救助機構合同会社(jRO)


jROとは、日本山岳救助機構(通称ジロー)の山岳遭難対策制度。

  1. おすすめのポイント
    上限330万円の範囲内で、遭難捜索や遭難者の救助費用を補填します。また、特定の条件に適用できるよう、会員制の費用分担制度をとっています。つまり、その年度に発生した捜索救助の費用を、全会員で平等に分担しており、他の共済制度や保険に比べて費用の負担が少ないのが特徴です。加入初年度の入会金は2000円。その後は、年会費2000円と分担金のみ。ちなみに、2016年度と2017年度の事後分担金は500円のみ。
  2. 注意点
    保障内容が遭難、捜索、救助費用に特に限定されているので、万一怪我をした際の入院費や後遺障害の治療費、死亡時の保険金支払いなどは対応していません。また、自分以外の登山者を、落石で怪我させたとしても、損害賠償保険ではないので保険金支払の対象外です。不足している分は、別の保険でカバーする必要があります。

モンベル「モンベル野外活動保険」


日本のアウトドア総合メーカー「モンベル」が販売している山岳保険。ピッケルやアイゼンを使用する登山は対象としていないものの、通常の登山やハイキング、キャンプやスキーなどが保険対象。

  1. おすすめのポイント
    「モンベル野外活動保険」の内「シングルプランC033」の1年契約保険料は3110円。ピッケルやアイゼンを使わない通常登山なら、jROよりも手厚い保障が有ります。実は、野外活動保険の方がjROより300円高いものの、1億円の個人賠償責任保険と上限500万円の救援者費用も付帯しています。モンベルの保険に加入するには、モンベル会員の年会費が別に1500円かかります。
  2. 注意点
    モンベルの山岳保険に加入するには、モンベル会員(年会費1500円)であることが加入条件。保険料の支払いが現金ではなく、クレジットカードの一括払いのみ受け付けます。クレジットカードの無い人は加入できません。モンベル保険は短期の保険を除くと、全体的に保険料が割高。

■日山協(日本山岳・スポーツクライミング協会)山岳共済会(JMSCA)


契約者は日本山岳・スポーツクライミング協会共済会(通称:日山協山岳共済会)。被保険者が山岳共済会の会員となっている団体傷害保険が「JMSCA」。

  1. おすすめのポイント
    団体加入保険のため、保険料が個人保険に比べて約52%割引なのが最も大きなポイント。また年齢制限や疾病の有無なども問われません。捜索費用や救援者費用の他に、死亡・後遺障害の保険金や入院・通院費用もカバー。賠償責任保険も含んでいるので、落石などにより他の登山者を負傷させた時も対応してくれます。
  2. 注意点
    他の山岳保険に比べ、総じて保険料が割高。例えば保険料の他に、山岳共済会の年会費1000円(18才未満は500円)が必要です。また、保険料の計算が複雑で、未加入者には簡単に計算できません。

■ドコモ ワンタイム保険


携帯電話最大手のdocomoが提供する山岳保険。保険期間は1日、或いは1泊2日に限定した保険。

  1. おすすめのポイント
    期間が極めて短期間に限定されているため、保険料が他社に比べて最も安い。ネットの申し込みも可能で加入しやすいのがおすすめのポイントです。
  2. 注意点
    加入条件がdocomoの「iモード契約」、或いは「SPモード契約」に限定されています。「おてがる」「おすすめ」「しっかり」の3種類があるものの、登山での利用は救援者費用が付帯している「しっかり」(保険料590円)に加入しましょう。

日本費用保障少額短期保険


上限300万円ながら、遭難者の遭難捜索と救助費用の補填に特化している「レスキュー費用保険」が「日本費用保障少額短期保険」。

  1. おすすめのポイント
    登山だけでなく、スキーや渓流釣り、野遊びなど「野外活動」全般が保険の対象。さらに、年会費も入会費も不要。年間保険料5000円のみ納付するだけで契約完了です。
  2. 注意点
    遭難捜索と救助費用に特別に適用される保険なので、入院費や後遺障害費用、死亡保険金は一切支給されません。自動更新されない1年ごとの契約なので、うっかり加入を忘れてしまうケースも見られます。また、損害賠償保険が付いていないために、落石等で他の登山者を負傷させた場合、補償は出ません。




まとめ

  1. 登山では登山専用山岳保険に加入しておくのが安心
  2. 登山ブームの影響で山岳事故が年々増加している。
  3. 遭難者の救出には膨大な人員と費用がかかる。
  4. 登山用保険の選び方は保障内容と注意点、保険料。
  5. 特におすすめの山岳保険は「jRO」と「モンベル山行保険」