常識!?覚えておきたい登山のマナー

登山にはマナーがありますが、それは誰かが教えてくれることではありません。山に登る人が、気持ちよく過ごせるように、自然と発生したものもあります。登山のマナーを知り、迷惑をかけないで気持ちよい登山をしましょう。

登山のマナーとは

山は誰のものでもありません。全ての登山者がマナーを守ることで、気持ちよい時間を過ごすことができます。それは明確なルールではなく、登山者の常識によって守られてきました。ベテランの登山者にとって常識といえるマナーも、初心者にとって戸惑うこともあるでしょう。そこで、登山のマナーを一通り紹介していきます。

■知らないと戸惑うことも


登山のマナーは安全の為に生まれた物もあります。例えば、ケガをして歩けなくなった時も、地上と違い救急車がすぐに来てくれるわけではありません。そこで、知らない人同士でも存在を確認しあい、安全に登山する目的のマナーもあります。そのような原因で発生したマナーですので、本来押し付ける物ではありませんが、なるべく知っておくほうがいいでしょう。マナーを知ることで、安全に、気持ちよく登山をすることができます。






登山前のマナー

登山のマナーは登山をする前からあります。一般常識とも言えますが、これを守らないとせっかくの登山が台無しになることもあります。

■駐車場でのマナー


登山口に駐車場があるのか確認しておきましょう。駐車場のキャパシティも重要です。夏場のハイシーズンの休日などは、駐車場がいっぱいで止められないこともあります。そのような場合、無理して路肩に止めるのはマナーに反しています。

  1. 少し離れたところに駐車場は無いか
  2. 公共交通機関やタクシーで行けるか

などを確認しておきましょう。登山口への狭い道を、車がふさぐことで緊急車両が入れなかったり、ほかの登山者の迷惑になることがあります。

■団体行動でのマナー


登山で団体行動する場合は、なるべく5人以下のパーティーに分かれたほうが良いでしょう。そして、パーティごとにリーダーを決めておくべきです。皆で登山するのは楽しいですが、もし、登山道が狭く追い抜きがしにくいのなら、長い列を作ることはほかの登山者の迷惑になるからです。速い人が後ろから来たのなら「抜かしてあげてー」と声をかけ、その声が届くぐらいの人数が都合良いのです。また、登山道では1列で歩くこと。横に並ぶと渋滞の原因になります。風などの騒音でリーダーの指示が行き渡らない事も考えられます。そのような時の為に、笛などがあれば便利です。


■登山届と登山計画書について


マナーとして登山届は記入しましょう。登山口にある用紙に、名前、住所、登る人数、登り始めた時間、登るコースなどを記入することで、万が一の時に重要な情報になります。そして、登山届よりも詳しく情報を書いたものが登山計画書です(登山計画書を登山届と言う場合もあります)。登山計画書は、より詳しく登るルートや、日程、食料や装備、所属する団体などを記入して、地元の警察などに提出するものです。

■ポールの先端を保護しよう


トレッキングポールは、重量を分散させ、登山に役に立つ便利な道具です。しかし、その先端は用途に合わせて使用する必要が有ります。特に、冬山で使えるように、先端がむき出しになっているのなら、それは夏山にダメージを与えます。貴重な高山植物や登山道が、ポールの先端で荒らされてしまいます。夏山では、かならず先端を保護し、先端が無いポールの利用は控えます。ポールの先端のキャップだけでも販売していますので、サイズを調べて購入しましょう。ポールの先端を保護するのは、ポールを使用する人のマナーです。


■ごみを持ち帰るための準備


行動食や食事などで、ごみはどうしても発生してしまいます。小さなごみをポケットに入れっぱなしにしてしまうと、いつの間にか落ちてしまい、山を汚すことにもつながります。ゴミを持ち帰る準備をしておきましょう。特にタバコを吸う人は、携帯灰皿を準備します。小さなごみを入れやすく、そしてこぼれにくい小袋を準備しておくと便利です。

ゴミを拾うのに、あると便利なのがウエストポーチやサコッシュです。行動食や水やスマホなどを入れるのにも使えます。

■保険の準備


自動車でも万が一の事故に備えて保険に入るように、登山でも万が一に備えておくべきです。街と違って簡単に救助できないのが山ですので、その費用は膨大なものになります。1日500円の簡単な保険でもいいので、加入しておけば安心です。


登山中のマナー

登山には独特なマナーがあります。安全に、かつ気持ちよく登山するために覚えておいたほうがいいでしょう。

■歩行中


□あいさつは大切

登山マナーの代表です。知らない人とあいさつを交わすのは、少し恥ずかしいと感じることもあるかもしれません。ですが、それは最初だけです。挨拶を交わすたびに、同じ山に登る仲間意識がうまれてくるはずです。挨拶には大切な意味があります。挨拶を交わすことで、自分の存在を他人にアピールすることができ、もし、万が一事故にあったときも「あの時挨拶を交わした人がいる」と、貴重な情報源になるでしょう。恥ずかしがらずに、どんどん挨拶していきましょう。何度もすれ違う人とも、何度も挨拶をかわします。

□すれ違いは登り優先

登山道には登る人と下る人がいます。人の多い登山道では、なんどもすれ違いが発生します。よけやすいほうが良ければいいのですが、基本的には登り優先です。登りのほうがスピードが遅く、視界が狭いのがその理由です。登っている人よりも、下っている人のほうが、向かいの人間を発見しやすいので、登っている人に優先してもらいます。

□追い越しと右側通行

スピードの違いで、登山の追い越しは必ず生まれます。競争ではないので、追い越しはなるべくスムーズに行いたいところです。登山道によっては、人間がすれ違えないぐらい狭い道もありますので、そのようなときはすれ違いやすい場所で追い越しをしてもらいます。そして、追い越しやすれ違いは右側通行が基本ですが、状況によって判断します。右側通行にこだわることはありません。例えば、追い越しやすれ違いで、崖側に大きく出なければいけない時。そのような場合は、無理に右側通行にこだわると、崖に落ちる危険がうまれます。

□山でとっていいのは写真だけ

山ではとてもきれいな高山植物や、珍しい石などがあります。これらを持ち帰ってはいけません。山の自然や生態系は、低所よりも壊れやすい存在です。一度、植物や石を取ってしまうと、その場所に自然が戻るまで長い時間が必要になります。山でとっていいのは写真だけです。キレイな写真を撮ることができれば、それは花や石よりも素晴らしい思い出になるでしょう。写真に興味がない人でも、ちょっとだけこだわったデジカメを使えば、簡単に良い写真が撮影できます。


□食事と動物へのケア

山での食事はおいしいです。おにぎりやパンだけでも美味しいですが、クッカーなどをそろえると、さらにおいしい食事を作ることができます。気を付けたいのは、食事の残りかすや残飯などを放置しないことです。それを食べる動物たちへのダメージになるからです。もちろん、直接動物にエサをあげてもいけません。自然の力で食事をとることが出来なければ、人から餌をもらうようになります。それは、生態系へ深刻なダメージを与えてしまいます。お湯や水を入れるだけで食べられるアルファ米はとても便利。ゴミもほとんど出ないので、簡単に持ち帰ることが可能です。


□ラジオと熊鈴は状況を見て

熊などが出没するような樹林帯の場合、音を立てることは身を守るのに有効です。代表的なのが熊鈴でしょう。ラジオなども有効です。ですが、周りが見渡せるような開けた場所などで、必要以上に音を立てることはありません。山に静寂を求めてくる人もいますので、必要ないと思ったら熊鈴をしまい、ラジオを消しましょう。熊鈴には消音機能があるものがあります。これなら、必要のない場所では音を立てないようにすることができます。


■宿泊


山小屋やテントに宿泊するのは、登山の楽しい一面です。非日常の美しい世界に、思わず興奮しておしゃべりしたり、お酒をたくさん飲んでしまう人もいます。周りに迷惑をかけないように、登山での宿泊マナーについて目を通しておいてください。

□トイレについて

携帯トイレを持ち歩くのは大切なマナーです。自分の排せつ物を持ち歩くのは、気分がいいものではありませんが、そこら辺にするのは、もっと気分が悪いものです。山では細菌類の活動が衰えるので、なかなか分解されません。悪臭や虫の大量発生の原因になります。携帯トイレは必ず持ち歩きましょう。ティッシュやウエットティッシュもあると便利です。


□山小屋とテント

山小屋とテントのマナーもいくつかあります。基本的には

  1. なるべく早く到着する
  2. 騒がない
  3. 散らかさない

を守れば大丈夫です。詳しいルールやマナーは山小屋やテントによって微妙に変わりますが、この3つを守っていれば、マナー違反になることは少ないです。

□夜は早く寝なければならない

山小屋でもテントでも、夜は早く眠るのがマナーです。美しい星空などに気分が上がるのは仕方ありませんが、朝早く行動する登山者にとって睡眠は大切。静寂を守ることがマナーとなります。早く寝るためには、耳栓が便利です。早く寝たいときほど、人の話し声が気になるものです。耳栓があれば、多少の話し声は気にならず熟睡できるでしょう。


□テントの場所と食事

テントを張る場合、どこに貼ってもよいわけではありません。必ず指定されたテント場がありますので、そこで張るようにしましょう。そして、食事の場所も、決まった場所があるところがありますので、注意してください。そして、余った食材を捨ててはいけません。虫や悪臭が発生したり、餌を求めて動物がやってくるからです。大きめのジップロックはあると便利です。1枚リュックに入れておくと、余った食材などを臭いを漏らさず入れておけます。


□山小屋のマナーは山小屋の人に確認する

山小屋ではなるべく早くにたどり着き、夜は早く寝れば大丈夫です。自分の荷物を散らかすことなく、周りに迷惑をかけないように心がけます。そして、山小屋ごとに個別のマナーやルールがある場合もありますので、到着後に山小屋の人に聞いて確認しておきます。後でイヤな気分にならないように、コミュニケーションを取っておくことをおすすめします。

□マナーを押し付けない

マナーを守らない人がいると、静寂が失われたり、嫌な気分になってしまいます。マナーを守らない人を注意することも大切ですが、その前に、一度落ち着いて考えてみましょう。本当に、注意することが正しいのでしょうか?周りに迷惑をかけているといっても、一時のことかもしれません。特に初心者は興奮して、周りが見えなくなるものです。おちついてから、それでもマナー違反が目立つようなら、高圧的にならずに、やさしく話しかけましょう。その人が外国の人という場合もあります。国が変われば常識も変わりますので、仕方のない一面もあります。マナーを守り、人に押し付けないのが、気持ちの良い登山です。


登山後のマナー

登山後は疲れから、何もしたくなくなるものです。周りを見る元気もなくなるので、知らずとマナー違反をやってしまうこともあります。

■泥汚れのマナー


バスや自家用車、タクシーなどを利用する場合があると思います。そのような時は、山の汚れに注意しましょう。

  1. 衣類や靴に汚れが付着していないか?
  2. 靴の裏に泥が付いていないか?

などをチェックします。汚れが付着している場合は、それが周りの迷惑にならないようにします。泥を落としたり、服をリュックに入れるなどします。

■濡れのケア


登山靴やズボンなどに水分を含ませていないでしょうか。沢や露などで、登山中は濡れてしまいがちになります。そのままバスや車、タクシーに乗り込むと、シートやトランクなどを濡らしてしまいます。水分を含んでいる場合を考慮して、ごみ袋などを1枚持っていくと便利です。濡れたものや、汗で湿った服、靴下などをまとめて入れておけば、周りに迷惑をかけません。







まとめ

  1. マナーを守って楽しい登山を
  2. マナーを押し付けることはしない
  3. マナーグッズで自然を守る