山の中、熊との距離300m。
噛む力は人間の約7倍、鋭利で尖った爪、時速約50kmで走る事ができる熊。
襲われてからでは遅い、
熊対策。登山中にヒグマと遭遇した、
体験と反省を元に、
予防・対処の、方法と道具をお伝えします。
熊と遭遇した体験からの反省
■状況
私は3人で、朝4時に芦別岳(北海道)※1へ登山に行きました。10時頃、登山道を歩いていると、頂上の方から、誰かが、叫ぶ声が聞こえて来ました。何気なく、歩いている登山道の先を見ると、300m程先に黒い塊が見えました。ヒグマでした。私達は恐怖に震え上がりました。すぐに、今歩いている登山道を引き返そうと思いましたが、迂回して下山する事になるので、確実に途中で、日が暮れてしまいます。私達はヘッドライトを持っていませんでした。
※1 芦別岳は標高1726メートル、夕張山地の中央にあり日本二百名山の一座としても有名。
私達が迷っている間に、続々と来た、登山者の中の一人が「しばらく待とう」と言いました。その方は、登山道を整備しに来た、山岳会の方でした。私達も待つ事としました。余計な刺激を与えないよう、静かにしていましたが、熊はこちらを意識しているのか、藪の中に入ったり、登山道周辺をウロウロしていて、私達は登山道を前に進めません。30分程すると、待っている登山者は私達を含め、6名になっていました。
突然、熊が6名に向かって突進して来ようとしました。とっさに、6名は持っていた鈴を大きく鳴らしました。同時に、私は恐怖で、荷物を持って逃げようとしました。
すると、熊は、100メートル程走って急に立ち止まり、山道をはずれ、谷側の藪へ下りて行きました。その隙に、山岳会の人を先頭に、一目散で、山道を進み、私達は頂上へ着く事が出来ました。6名とも緊張感で疲労困憊でした。
■反省
3つ反省すべき点がありました。
◆ヘッドライトを持参しなかった。
熊を避けらのに必要な事は、安全なルートへ変更する事でした。しかし、歩行時間が
長くなり、途中で日没となる事が想定されました。山の中で暗闇の中を歩くのは大変危険です。ヘッドライトを持参しなかった事で、選択肢を狭めてしまいました。
◆「熊よけスプレー」を持っていなった。
何も対処できる道具が無いと不安で、どうしてもとっさに、逃げようとする意識が出て来ます。
◆背を向けて、逃げようとした
熊に対して、背を向けて逃げるのは絶対にやってはいけない事です。熊に対する予備知識が不足していました。しかし、良かった点もあります。鈴を持参していた事です。熊が突進して来た際に、大きな音を、鈴で立てる事が出来ました。藪に逸れてくれた、理由の一つになったのではないかと思います。
また、後続の登山者の中に山岳会の方がいた事も良かったと思います。私達、3名のメンバーだけでは、適格な判断ができた自信がありません。登山者の多い時期、時間帯に登っていたから、後続の登山者がいたのだと思います。
熊対策
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■道具
◆熊鈴
熊は臆病な性格です。人間の存在に気付く事ができれば、逃げます。人間の存在を知らせる事ができれば、不意の遭遇を回避出来ます。
◆熊よけスプレー
何も対抗できると思える手段が無いと、人間は不安になります。不安になると、本能的に逃げようとします。熊スプレーを持っていれば、不安は少し和らぎ、「背を向けて逃げる」という最悪の行為を回避できます。
■登山の計画
熊の出没する時間、時期、場所を把握しておきましょう。熊が活発に行動するのは早朝と夕方で、この時間に山に入るのはなるべく避けたほうが賢明です。
また、秋は熊が活発に行動する季節です。紅葉が美しい季節ですが、熊と遭遇する可能性が高い時期でもあります。熊出没の頻度が高い山は、目撃情報や被害状況がサイトで公表されているので確認しましょう。
地元のガイドや山小屋の人なら「生息地帯」「出没する時間帯」「性格」まで把握していることがあります。遠慮なくアドバイスを貰うべきです。
天候にも気を配りましょう。台風や低気圧が通るときは、熊もエサを食べることができなくなります。そのためそれらが通過した次の日などはエサをもとめて彷徨うことがあります。
状況に合わせ、途中で、経路を変更する可能性はあります。予定より時間がかかって、暗くなっても活動できるよう、ヘッドライトは携帯しましょう。
遭遇した熊へ絶対やってはいけないこと
■背を向けて逃げる
遭遇した熊への禁止事項は、背を向けて逃げる事です。本能的に熊は逃げるものを追いかけます。熊は自分の縄張りを守ろうとして、突進するなどの、威嚇行動をとります。熊と遭遇したら、目を見て直立し、ゆっくり後退して下さい。熊は臆病な生き物で、基本的には人間を避けようとします。しかし、装備などの不足があると、心の余裕が無くなり、とっさの対応が出来なくなります。熊スプレーを持参するなど、装備に余裕を持たせましょう。